小説広場

「痛い!!」
 原っぱで寝返りを打った瞬間、「ぼくに当たると痛いよ〜。ぼくはめちゃめちゃとんがってるよ〜」と主張している石に頭をぶつけてしまったのだ。
 わたしは、この石に、まだ幼い妹・ルーミィが当たらないようにと、そこらへんにたくさんある石たちのなかに放った。ルーミィからは、数メートル離れているから、いくらこの子の寝相が悪くても、さすがに当たることはないだろう。
 よしっ!!寝よう!と、今度は危ない石がないかどうか見回してから、わたしは再び横になり、眠りについた……。

 「痛い!!」
 今日は運が悪い。二度も同じ言葉で目覚めるなんて……。
 わたしを揺すって起こしたのは、爪が長い人間、サティアスだった。サティアスは爪が五センチメートルほどある。彼は優しく起こしてくれたつもりなんだろうけど、爪がわたしに当たってとても痛かった。
「あれ?リメアは?まだ起きてないの?」
 リメアは、わたしのすぐ下の妹。ルーミィは、末っ子で、三女なの。つまり、わたしが三姉妹の長女なんだ。
 いつもは、サティアスではなく、誰よりも早起きのリメアがみんなを起こしてくれる。しかも早朝、朝五時に!エルフにとって、朝というのは、一日の中で一番つらい時間なのだ。しかし、彼女は太陽の神アポロンが守護神だからか、とても早起き!ぶっきらぼうに体を揺らして起こしてくれる。そのリメアが、朝起こしてくれなかったことなんて一度もない……今日までは(というより、長女であるわたしが早起きでなくといけないんだけど)。
「リメアは、まだ寝てる。悪い夢を見ているみたいだ」
綺麗な眉を寄せて、心配そうな表情のサティアス。彼はわたしたちと違って人間だけど、とても優しいの。
あーっと、本題に入る前に、わたしたちのことをちょっと自己紹介。これからは紹介している暇もなさそうだしね。
今回、語り手を勤めさせていただくのは三姉妹の長女のわたし、ラーミィ・ラグストーン。本名は、ラーメルっていうんだけど、普段はラーミィって呼ばれてる。
十六歳で、武器はショートソード。防具はどんな武器でも跳ね返せる、魔法の盾。ソードはそんなに上手くないけど、守るのは結構得意。だから、主に守備役としてまわることが多い。
服装は、うす茶色の無地でふわふわっとした生地のワンピース。その下にはレギンスをはいていることが多い。暑いときには脱ぐけどね。
目は、自分でいうのも何だけど、海のように綺麗な青。だからかな、海の魔法が得意なの。髪は、シルバーブロンド……銀髪っていうのかしら?を、ソバージュにして、胸あたりまで伸ばしている。まあ、顔立ちは、悪くないんじゃないかと思ったりする。
守護神はもちろん、知恵と戦いの女神アテナ。たまに、海神ポセイドンに祈ったりすることもあるけど、アテナとポセイドンは仲が悪いから、守護神はアテナということにしている。
さて、さっきも話題に上ったけど、とても早起きのわが妹・リメアは、わたしの名前・ラーミィに合わせて、リーミィと呼ばれたりすることもあるけど、本人は、そのあだ名を嫌がっている。子供っぽいのが嫌いなんだそうな。
性格は、めちゃくちゃクールで冷静、頭がきれる。わたしたち──わたしとリメアとルーミィとサティアス──のなかで、唯一ロングソードが扱える。あと、弓も使えて、その腕は抜群。彼女は負けず嫌いだから、自分にできないことがあると耐えられないんだろうな。
年は十三歳。髪は、金髪の交じった、ひざまでとどく長いブロンド。わたしたち姉妹のなかで、ブロンドなのはリメアだけ。両親も、シルバーブロンドだったのにね。
目は、見る人を冷めさせるような透き通った水色。服装も、結構クール。白い革張りのワンピースに、黒いベルト。茶色いロングブーツと、黒いレギンスをはいている。黒いジャケットをかぶっていて、長い髪に似合う黒のハットも、ななめにかぶっちゃって、なかなかかっこいいんじゃない?彼女は白と黒が中心。この色が、一番落ち着くんだって。
ここまでは普通だよね?たまにいるよね?リメアみたいな人。でも、これから話すことはちょっと普通じゃない。それに、リメアも知らないこともふくまれているから、注意して聞いてね。